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II  農林水産研究の重点目標

農林水産研究は、農林水産業、食料、環境等が直面する諸課題に対して、農林水産政策の展開と密接に連携しつつ技術開発の面から課題解決に取り組むとともに、新たな技術開発によってその未来を切り拓くという役割を担っている。このため、農林水産研究が目指すべき社会的な貢献を念頭に置き、農林水産研究の多様な取組の中から、今後10年程度を見通して重点的に取り組むべき研究開発の課題を重点目標として示した。

重点目標は、農林水産分野及び関連分野の最新の研究開発動向と、食料・農業・農村基本計画(平成17年3月)、森林・林業基本計画(平成18年9月)及び水産基本計画(平成19年3月)に示されている農林水産業・食品産業の健全かつ持続的な発展、食の安全・信頼の確保及び農山漁村の振興等に関する農林水産施策の基本的方向並びに技術開発分野に対する政策的要請を踏まえて設定した。

また、重点目標に係る研究開発については、代表的な課題ごとに、ほぼ5年先の平成22年度及びほぼ10年先の平成27年度に達成すべき具体的な目標を示した期別達成目標を定め、その達成が図られるよう各種の研究施策を効果的に組み合わせつつ推進する。研究開発の実施状況や達成状況については、毎年度の点検・検証に基づく進行管理を行うとともに、客観的かつ厳格な評価を総合的に実施し、重点目標の達成に向けて評価の結果を研究資源の適切な配分に反映させる。

1.課題の解決と新たな展開に向けた研究開発

農林水産研究が目指すべき社会的な貢献を踏まえて7つの研究領域を設定し、次に掲げる項目に関する研究開発を、今後10年程度を見据えて重点的に取り組む。

(1)農林水産業の生産性向上と持続的発展のための研究開発

この研究領域においては、農林水産業の生産性の向上と持続的発展を図るため、水田・畑輪作、耕畜連携、高収益園芸及び持続的生産に関する技術体系の確立を推進する。

これらの研究開発により、生産性向上を通じた農林水産業の競争力強化、農林水産物の安定供給と自給率向上及び地域経済の回復等に貢献する。

なお、研究開発の推進に際しては、地域の特性に応じた研究開発と多様な地域における技術の実証、新たな技術の担い手への導入及び行政部局・普及部門との連携に留意する必要がある。

1)  地域の条件を活かした高生産性水田・畑輪作システムの確立

ア  水田作農業・畑作農業については、担い手に集中した品目横断的政策の導入、優良農地の確保と農地の効率的な利用の促進及び地域の創意工夫を活かした生産の低コスト化が求められている。これに対応して、大規模な担い手の経営を支援するための技術開発が進められ、輪作体系を含めた生産性の向上が図られてきたものの、水田輪作においては収穫作業と播種作業との競合回避及び大豆播種における降雨の影響回避等、畑作においては馬鈴しょ・豆類・野菜類等の省力化が進展しないことに伴う小麦作付への偏り、業務用等に対応した露地野菜の安定供給等が課題となっている。

イ  このため、耕起法・播種法・除草法の組合せによる大規模水田輪作システムの確立、収穫法等の高度化による地域特性に適合した省力畑輪作システムの確立、水田輪作・畑輪作に向けた品種・栽培・収穫技術の体系化、水田輪作・畑輪作システムにおける水・土地基盤の制御技術の確立及び地域条件に対応した水田輪作・畑輪作システムの経営的評価を推進する。

2)  自給飼料を基盤とした家畜生産システムの開発

ア  水田を高度に活用した耕畜連携、放牧による草地畜産の強化等による自給飼料基盤の確立、薬剤に依存しない家畜生産等に対する期待が高まる一方、自給飼料のコスト高、担い手の減少による草地畜産の後退が進んでおり、輸入濃厚飼料への依存からの脱却と自給率の向上、健康な家畜生産を目指すためには、飼料添加物に依存した家畜飼養からの脱却や自給飼料の利用拡大が課題となっている。

イ  このため、水田用の多収飼料作物品種の育成と耕畜連携による飼料生産技術の体系化、地域条件に対応した自給飼料生産・利用技術体系の確立、抗菌性飼料添加物に依存しない家畜飼養管理システムの開発及び地域条件に対応した自給飼料生産・利用技術体系の経営的評価を推進する。

3)  高収益型園芸生産システムの開発

ア  野菜、花き及び果樹等の園芸分野については、アジアモンスーン地域の気候に適合した日本独自の省力周年栽培システムの実現による国際競争力の強化が期待される中、生産・流通・消費段階における品質の安定化、高コスト体質からの脱却、資材・廃液等の排出削減、高温や低温の克服、消費構造変化への対応及び高品質な園芸作物の輸出の促進等が課題となっている。

イ  このため、複合環境制御等によるモンスーン気候に適合した高収益型施設園芸生産システムの構築及び果樹の持続的高品質安定生産技術の開発を推進する。

4)  地域特性に応じた環境保全型農業生産システムの確立

ア  我が国農業の持続的な発展を図るためには、農業者がまず農業生産活動に伴う環境負荷の低減に向けた規範を踏まえた取組を行っていくことが重要であるが、化学合成農薬、化学肥料等の使用量の節減が可能となるようなより高い水準の取組を進めていくためには、低コスト化、省力化、高品質化等の技術開発の方向とも合致し、農業生産現場において実用性が高い環境保全に資する新たな技術の開発とその体系化が課題となっている。

イ  このため、地域特性に応じた生物機能等を利用した持続的な防除技術の開発、自然循環機能の高度発揮のための適正施肥技術の開発、省資材化技術のための抵抗性品種の育成及び環境負荷低減のための合理的な技術体系の確立を推進する。

5)  持続可能な森林管理及び木材の生産・利用システムの開発

ア  我が国は木材の約80%を海外に依存する中、戦後形成された国内森林資源の有効活用と環境に配慮した多様な森林整備により、森林施業から加工・流通・消費に至る持続的な木材生産・利用構造の確立が求められており、林業と木材産業の連携による多様な木材・木質製品の低コスト・安定供給及び木材製品の安全性を含む信頼性の向上が課題となっている。

イ  このため、多様な森林の整備及び資源管理手法の確立、省力的・低負荷型の伐出・間伐・育林技術の開発及び信頼性の高い多様な木材・木質製品と加工技術の開発を推進する。

6)  水産資源の持続的利用及び積極的な増養殖と効率的漁業生産システムの開発

ア  水産資源の持続的利用のための適切な保存・管理が国際的に求められ、また、積極的な水産資源の増大を図るため、生態系機能の保全にも配慮した増養殖技術の開発が課題となっている。さらに、国際競争力のある安定的な漁業経営を実現するため、効率的な漁業生産形態への移行が課題となっている。

イ  このため、水産資源の持続的利用のための管理技術の開発、水産生物の効率的・安定的な増養殖技術の開発及び経営安定化のための効率的漁業生産技術の開発を推進する。

(2)ニーズに対応した高品質な農林水産物・食品の研究開発

この研究領域においては、生産現場から加工・流通及び消費に至る一連の過程の中で、消費者及び実需者のニーズに対応した高品質な農林水産物・食品の開発と加工利用技術の開発を推進する。

これらの研究開発により、高品質化を通じた農林水産業・食品産業の競争力強化、農林水産物の安定供給と自給率向上、国民の健全な食生活の実現及び地域経済の回復等に貢献する。

なお、研究開発の推進に際しては、生産研究と加工・流通研究の一層の連携、消費科学・栄養学・医学分野との連携及び独法研究機関・公立試験研究機関・民間の連携に留意する必要がある。

1)  高品質な農林水産物・食品と品質評価技術の開発

ア  食生活が豊かになり、農林水産物の輸入が増加している中、国民の健康志向、美味しさや新鮮さ等の品質に対する消費者及び実需者のニーズが一層高まるとともに、地産地消や伝統的食材の見直し等、新しい食と農林水産業の在り方が注目されている。これらに対応して、輸出を含めた国際競争力のある高品質な農林水産物・食品の安定供給、地域の特色ある農林水産物・食品の開発への取組が課題となっている。

イ  このため、商品価値の高い農林水産物の開発と高品質化に向けた育種・栽培・収穫技術の体系化、農林水産物の品質特性の解明と簡易・迅速品質評価技術の開発、産地ブランド化のための農林水産物・食品の開発及び産地ブランド化のためのマーケティング手法の開発を推進する。

2)  農林水産物・食品の機能性の解明と利用技術の開発

ア  高齢化が進展する中、健全な食生活による健康寿命の延伸や食品の美味しさ及び生活習慣病リスクの高い人々等を対象とした効果の高い機能性食品等に対する国民の期待が高まっており、通常の食生活において摂取される農林水産物・食品及びそれらが有する成分の機能性の解明と、国民の健康の維持・増進に資する農林水産物・食品の開発が課題となっている。

イ  このため、食品の持つ機能性の解明と評価技術の開発、機能性食品の開発と利用・制御技術の開発を推進する。

3)  農林水産物・食品の品質保持技術と加工利用技術の開発

ア  高品質で鮮度の高い農林水産物・食品に対する消費ニーズが高まるとともに、その流通が国際化・広域化する中、食味・食感や機能性成分等の農林水産物・食品に求められる品質が加工・流通段階において低下することを防ぐ必要がある。これらのことから、食品の加工利用技術に関する科学的知見の蓄積と、ナノテクノロジー等を活用した新たな品質保持・加工利用技術の開発が課題となっている。

イ  このため、生鮮食品・加工食品・花き等の新たな品質保持技術の開発、食品の新たな加工利用・分析技術の開発、調理過程における食品成分の動態解明と新規調理加工技術の開発及び味覚やそしゃく挙動を基にした食嗜好の解明と評価・利用技術の開発を推進する。

(3)農林水産物・食品の安全確保のための研究開発

この研究領域においては、生産から加工・流通及び消費に至る一連の過程の中で、農林水産物・食品の汚染防止や危害要因低減の技術及び信頼確保やリスク分析に資する技術の開発を推進する。

これらの研究開発により、農林水産物・食品の安全・信頼の確保及び国民の健全な食生活の実現等に貢献する。

なお、研究開発の推進に際しては、リスク分析に係る行政部局との連携、国内外の情報収集と国際協力の推進、医学・情報工学分野との連携及び生産研究と加工・流通研究の一層の連携に留意する必要がある。

1)  農林水産物・食品の安全性に関するリスク分析のための手法の開発

ア  病原性大腸菌O157による食中毒、BSE(牛海綿状脳症)等の発生、食品の偽装表示等の問題の発生により、食品の安全や信頼の確保に対する消費者の要望が高まる中、食品安全行政にリスク分析手法が導入されることとなったため、リスク評価やリスク管理に資する科学技術データを適正に比較・判断・予測して行政における規制・指導に活用するレギュラトリーサイエンスの確立と、科学技術データに基づいたリスクコミュニケーション手法の確立が課題となっている。

イ  このため、潜在的なものも含めた危害要因の動態予測手法の開発、危害要因の簡易・迅速・高感度検出技術の開発、農林水産物・食品の安全性に関するリスクコミュニケーション手法の確立及び農林水産物・食品の汚染実態の把握に資する分析データの信頼性確保を推進する。

2)  人獣共通感染症・未知感染症等の防除技術の開発

ア  BSE、高病原性鳥インフルエンザ等の人獣共通感染症の発生や、口蹄疫、コイヘルペスウイルス病等の発生による生産者等の甚大な被害と公衆衛生上の問題が生ずる中、最新の科学的知見に基づいた防疫体制の強化及び国内外の感染症に対する情報の収集等の対策の確立が課題となっている。

イ  このため、人獣共通感染症の制圧のための診断・防除技術の開発、BSE等動物プリオン病の制圧技術の開発及び家畜・家きん等の重要感染症と魚介類疾病防除技術の開発を推進する。

3)  生産・加工・流通過程における汚染防止技術と危害要因低減技術の開発

ア  有害化学物質・微生物等の危害要因による農林水産物・食品の汚染への懸念が拡大し、GAP(適正農業規範)に基づく安全な農産物生産が推進されつつある中、農林水産物・食品による消費者の健康リスクの低減等を実現するためには、危害要因の適切な把握に基づき、生産から加工・流通を経て消費に至る各段階において危害要因による汚染防止及び危害要因の除去を可能とする技術を確立することが課題となっている。

イ  このため、生産段階における危害要因の吸収抑制・除去技術の開発、汚染防止を可能とする農林水産物・食品の加工・流通技術の開発及びリスク低減技術の実効性と有用性の評価手法の開発を推進する。

4)  農林水産物・食品の信頼確保に資する技術の開発

ア  食肉の産地偽装事件等を契機に食品表示に対する不信感が高まる中、消費者の食に対する信頼を回復するためには、トレーサビリティ・システム(生産流通情報把握システム)及び適正な食品表示の確保のための認証システムと判別技術等の開発が課題となっている。

イ  このため、生産・流通情報を収集・伝達・提供するためのシステムの開発、適正な表示を担保するための判別・検知技術の開発及び消費段階における農林水産物・食品の品質保証技術の開発を推進する。

(4)農山漁村における地域資源の活用のための研究開発

この研究領域においては、農山漁村に広く賦存する地域資源であるバイオマスの地域特性に応じた利用技術、社会共通資本である施設等の資源の維持管理と防災機能向上のための技術及び都市と農山漁村の交流を含む地域マネジメントに必要な手法・技術の開発を推進する。

これらの研究開発により、地域経済の回復、安全で潤いのある国民生活の実現及び農林水産物の安定供給と自給率向上等に貢献する。

なお、研究開発の推進に際しては、農林水産業の生産技術研究と農山漁村を対象とした工学的・社会科学的研究との連携、理工学や他産業に係る研究分野との連携及び国・地方自治体等の行政部門・各種地域団体との連携に留意する必要がある。

1)  バイオマスの地域循環システムの構築

ア  化石燃料等の有限資源への依存からの脱却と農林水産業が有する自然循環機能を活用した循環型社会の構築及びバイオマス産業の育成による地域における新たな雇用機会の創出が求められる中、家畜排せつ物、食品廃棄物、下水汚泥、木質系廃材、林地残材、水産加工残さ及び農作物非食部等の広く、薄く存在する農山漁村のバイオマスや都市から排出されるバイオマスを活用するための低コスト収集・運搬、効率的変換・利用技術の体系化が課題となっている。

イ  このため、農畜産廃棄物系バイオマスの多段階利用による地域循環システムの実用化、農山漁村のバイオマスの効率的収集・利用技術の開発及び未利用バイオマスの変換・利用技術の開発を推進する。

2)  農山漁村における施設等の資源の維持管理・更新技術の開発

ア  農山漁村における地域社会としての結びつきが弱体化し、農業水利施設、治山施設、農道・林道及び漁港等、社会共通資本である施設等の資源を適切に維持管理することが困難となる中、老朽化や管理の粗放化による施設機能の低下や、施設の防災機能の低下に対する懸念が高まっており、生産・生活基盤を次世代へ継承する上で、施設等の資源の維持管理・更新技術の開発が課題となっている。

イ  このため、農業用施設等の資源の維持管理・更新技術の開発、漁港・漁場・漁村の基盤整備技術の開発・高度化及び農業用施設等の災害予防と減災技術の開発を推進する。

3)  都市と農山漁村の共生・対流を通じた地域マネジメントシステムの構築

ア  安全な農林水産物の供給、豊かな自然生態系及び農山漁村が持つ文化や美しい景観の継承等に対する国民の関心が高まる中、農山漁村の活力低下と過疎化・高齢化・混住化等により地域社会の機能低下が進んでいることから、都市と農山漁村の共生・対流を通じて地域経済の回復を図ることが課題となっている。

イ  このため、新たな都市と農山漁村の交流システムの構築、農山漁村の集落機能の再生と生活環境基盤の整備手法の開発及び資源・環境の保全を含む地域マネジメントシステムの開発を推進する。

(5)豊かな環境の形成と多面的機能向上のための研究開発

この研究領域においては、安全で豊かな国土・海洋の環境を形成するための多面的機能の向上技術の開発、農林水産生態系の適正管理技術と野生鳥獣等による被害防止技術の開発及び農林水産生態系における生態リスク管理技術の開発を推進する。

これらの研究開発により、豊かな環境の形成と次世代への継承、安全で潤いのある国民生活の実現、地域経済の回復及び農林水産物の安定供給と自給率向上等に貢献する。

なお、研究開発の推進に際しては、農業、林業及び水産業の各研究分野相互の連携並びに環境科学・生態学・河川工学分野等との連携に留意する必要がある。

1)  農地・森林・水域の持つ国土保全機能と自然循環機能の向上技術の開発

ア  人口の都市集中が進み、安全な国土と水資源の確保に対する期待が高まる中、農林水産業の活力の低下に伴う農山漁村社会の機能の低下等により国土の8割以上を占める森林・農地・内水面と沿岸域の維持管理が困難となり、自然災害への脆弱性の拡大や水循環の健全性低下への危惧が増大していることから、国土保全・自然循環機能の向上技術の確立が課題となっている。

イ  このため、国土保全機能の指標化による管理目標設定手法の開発及び流域における水循環・土砂崩壊防止等の国土保全機能の向上技術の開発を推進する。

2)  農林水産生態系の適正管理技術と野生鳥獣等による被害防止技術の開発

ア  里山や水田、水辺等の身近な自然との触れ合いに対する国民の期待や、それらが果たす生物多様性保全上の役割に対する認識が高まる中、農林水産生態系の劣化や利用・管理の放棄、都市的土地利用への変化、沿岸域の開発等が進み、野生鳥獣や植物、その他の生物による農林水産業や国民生活への被害の増大、花粉症等当初想定し得なかった影響の発生、生物多様性の低下への危惧が拡大しつつある。これらのことから、農山漁村の活性化を図りつつ、自然環境の再生を実現するための生態系の適正な管理技術の開発や鳥獣害防止等の生物による影響の軽減技術の開発が課題となっている。

イ  このため、耕地・草地・森林・水域の生態系管理・再生技術の開発及び野生鳥獣等による被害発生予察と生息地の総合的管理による効果的な被害低減・防止技術の開発を推進する。

3)  農林水産業の持つ保健休養機能ややすらぎ機能等の利用技術の開発

ア  国民の価値観やライフスタイルが、経済性の追求からゆとりや潤いの追求へと変化し、農山漁村における自然との触れ合い、農林水産業を通じた快適性の享受及び教育上の効果に対する国民の期待が高まっている中、農林水産業が人々の心身に及ぼす影響の科学的な評価及び機能の向上技術に関する研究蓄積の拡大が課題となっている。

イ  このため、農山漁村空間が持つ快適性の向上技術の開発及び農林水産技術の活用によるセラピー・教育効果の利用技術の開発を推進する。

4)  農林水産生態系における生態リスク管理技術の開発

ア  遺伝子組換え生物及び外来生物(侵入・導入生物)等の逸出や、農地を含む非特定汚染源からの化学物質の農林水産生態系外への負荷の拡大や負荷の広域的な拡散に対する懸念が高まっている中、生物・化学物質等による生態系のかく乱リスクの評価とその広域拡散を防止する技術の開発が課題となっている。

イ  このため、遺伝子組換え・外来生物及び化学物質の生態リスク評価手法の開発、遺伝子組換え・外来生物及び化学物質の生態リスク管理技術の開発を推進する。

(6)国際的な食料・環境問題の解決に向けた農林水産技術の研究開発

この研究領域においては、国際的な食料問題、環境問題の解決を図るための安定的生産技術の開発及び地球規模の環境変動への対応技術の開発を推進する。

これらの研究開発により、世界の食料問題、環境問題の解決及び農林水産物の安定供給等に貢献する。

なお、研究開発の推進に際しては、CGIAR(国際農業研究協議グループ)等の国際機関との連携、緊密な関係を有する東アジアを始めとする諸外国の研究機関との連携及び環境科学・生物資源分野との連携に留意する必要がある。

1)  不安定環境下における持続的生産技術の開発

ア  世界的な食料不足の解消と我が国食料の安定供給の確保が求められる中、開発途上地域を中心とした干ばつ、過耕作、過放牧による砂漠化、土壌劣化、水質汚染の進行及びマングローブ林や熱帯林の衰退による環境悪化等により、農林水産業の生産基盤の劣化が進行しており、不安定環境下での持続的生産技術の開発が課題となっている。

イ  このため、不安定環境下における安定生産に向けた遺伝資源活用技術の開発、持続的生産のための土壌・水資源管理、安定栽培技術の開発及び不安定環境の修復技術の開発を推進する。

2)  地球規模の環境変動に対応した農林水産技術の開発

ア  地球温暖化の進行により、気象災害の拡大のみならず、生産適地の変動や新たな病虫害の発生、有害生物の出現及び病原微生物の侵入・定着等による生産の不安定化に対する懸念が高まっている中、温室効果ガス排出削減と吸収・固定促進、地球温暖化等による農林水産業の生産力低下の防止等の技術開発が課題となっている。

イ  このため、農林水産業における地球温暖化対策技術の開発及び地球温暖化等に伴う生産適地変動や病虫害等の拡散に対応した農林水産技術の開発を推進する。

(7)次世代の農林水産業を先導する革新的技術の研究開発

この研究領域においては、次世代の農林水産業を先導する革新技術を活用した農林水産生物の開発、精密生産技術、ロボット等自動化技術及び生物機能利用技術の開発を推進する。

これらの研究開発により、次世代の農林水産業の展開、新たな産業の創出、地域経済の回復及び農林水産物の安定供給と自給率向上等に貢献する。

なお、研究開発の推進に際しては、科学技術の進歩と国民意識とのかい離を踏まえ、遺伝子組換え技術等の先端技術に関する積極的な情報発信及び研究開発の企画・実施段階における国民との双方向コミュニケーションの確保を図るとともに、理工学分野との連携に留意する必要がある。

特に、バイオマスの利活用については、国産バイオ燃料の大幅な生産拡大に向けた施策の展開に資するよう、技術面での課題を解決する研究開発を推進する。

1)  ゲノム情報等先端的知見の活用による農林水産生物の開発

ア  農林水産物の品種育成については、従来の多収性や高品質化に加えて、病虫害耐性や環境耐性等による飛躍的な生産性向上、有用物質生産のための新形質の付与等多様な品種の効率的な育成と育成期間の短縮が求められる中、ゲノム情報等の先端的知見を活用して収量性や機能性を飛躍的に向上させる新たな品種開発技術や増殖技術を確立し、食用、飼料用及び油糧用等の様々な農林水産物で実用化を図ることが課題となっている。特に、イネゲノム全塩基配列解読の成果を活かして、有用な遺伝子を計画的に組み合わせる遺伝子集積による効率的な品種育成システムを構築するとともに、有用物質生産を行うことが求められてる。

イ  このため、ゲノム育種による効率的な新品種育成システムの開発、遺伝子組換え技術の実用化に向けた新形質付与技術の開発及び体細胞クローンにおける発育・成熟等に関与する因子の探索を推進する。

2)  IT活用による高度生産管理システムの開発

ア  我が国の農林水産業は、高度な水管理を必要とする水田中心の農地、地形的要因から地上調査に困難を伴う森林及び絶えず変化する漁場の存在等へ対応するため、生産環境に関するきめ細かな情報の収集と活用が求められている中、IT(情報技術)やセンシング技術(作物の作付け状況や生育状況等の検知技術)等の革新技術の農林水産業への導入が課題となっている。

イ  このため、IT活用による高度生産管理システムの構築、地理情報・センシング情報の統合による生産情報管理システムの開発及び衛星等センシング情報による生物資源監視システムの開発を推進する。

3)  自動化技術等を応用した軽労・省力・安全生産システムの開発

ア  農林水産業の経営規模拡大に対応した作業の大幅な効率化・省力化、農林水産業労働力の減少・高齢化、女性労働力の増加等に対応した軽労化と安全性の確保が求められる中、他分野で開発されたロボット技術等の先端的技術を活用することによる画期的な軽労化技術や安全対策の導入が課題となっている。

イ  このため、ロボット技術と協調作業システムによる超省力・高精度作業技術の開発及び自動化技術の高度活用による作業安全・軽労化技術の開発を推進する。

4)  新たな生物産業の創出に向けた生物機能利用技術の開発

ア  バイオテクノロジーの活用による生物機能の解明と利用技術の開発が進む中、その成果を活用した有用物質や新素材の生産が課題となっている。

イ  このため、バイオマスの低コスト・高効率なエネルギー変換・利用技術の開発と評価、昆虫機能を利用した創農薬・医療用新素材の開発、動物機能を利用した医療用素材の開発及び微生物機能を利用した新規食品関連素材の開発を推進する。

5)  国産バイオ燃料の大幅な生産拡大に向けたバイオマスの低コスト・高効率エネルギー変換技術の開発

ア  温室効果ガスの排出抑制による地球温暖化防止や、資源の有効利用による循環型社会の形成等が求められる中、国産バイオ燃料の大幅な生産拡大を図るため、原料となるバイオマスを低コストで安定的に供給することが必要であり、稲わら等の作物の未利用部分の収集技術や高バイオマス量を持つ資源作物の開発、低コストでの栽培技術の開発を進めるとともに、これらを低コストで効率的にバイオエタノール等に変換する技術の開発が課題となっている。

イ  このため、バイオマスの低コスト・高効率なエネルギー変換・利用技術の開発と評価を推進する。

2.未来を切り拓く基礎的・基盤的研究

1.の研究開発を支える生命科学・環境科学の基礎的・基盤的研究については、4つの研究領域を設定し、次に掲げる項目に関する研究を、情報工学や医学等の異分野からの参画も得ながら、今後10年程度を見据えて重点的に取り組む。

(1)農林水産生物に飛躍的な機能向上をもたらすための生命現象の解明

この研究領域おいては、農林水産業に係る動物、植物、微生物の生命現象の生理・生化学的解明及び生物機能の高度発揮に向けた環境応答機構等の解明に関する基礎的研究を推進する。

これらの基礎的研究により、将来の革新的な農林水産技術の開発と生物機能を利用した新産業の創出を加速する。

なお、研究の推進に際しては、穀類として初めてイネゲノム全塩基配列を解読した成果を他の植物の生命現象の解明と、それを応用した農林水産業の飛躍的な発展に広く活用していくことが求められている。このため、生命科学分野での国際的イニシアティブの確保、国内外の研究機関間における連携、積極的な情報発信及び研究の企画・実施段階での国民との双方向コミュニケーションの確保に留意する必要がある。

1)  農林水産生物の生命現象の生理・生化学的解明

ア  農林水産業の生産性の飛躍的向上、生物機能を活用した新産業の創出を図るためには、イネ、イネ以外の作物、樹木、海藻類、昆虫、家畜、魚介類及び微生物等の生物ごとの生命現象を、遺伝子、タンパク質、細胞及び個体の各レベルで解析し、遺伝情報や生理学・生化学・形態学的知見を蓄積することが課題となっている。

イ  このため、植物の発現遺伝子の網羅的解析、動物の発生分化・行動・繁殖等の生体制御機構の解明及び微生物代謝機能の制御等の解明を推進する。

2)  生物機能の高度発揮に向けた生産及び環境応答に関わる機構の解明

ア  農林水産生物の飛躍的な生産性の向上を図るためには、環境ストレス耐性や光合成等の環境応答についての個体における発現機構を解明し、品種育成や有用物質生産の加速化を図ることが課題となっている。

イ  このため、植物の環境応答機構の解明及び動物の環境応答機構等の解明を推進する。

(2)自然循環機能の発揮に向けた農林水産生態系の構造と機能の解明

この研究領域においては、耕地・草地・森林・水域の生態系について、各生態系間の境界領域を含む構造と機能の解明及び農林水産業の変化によるこれら生態系の変動メカニズムの解明を推進する。

これらの基礎的研究により、農林水産業が有する自然循環機能の高度発揮に向けた技術開発を加速する。

研究の推進に際しては、農業、林業及び水産業の各研究分野相互の連携並びに環境科学・生態学分野との連携に留意する必要がある。

1)  農林水産生態系の構造と機能の解明

ア  農林水産生態系の適正な管理及び生態系機能を活用した持続的生産技術の確立を図るためには、農林水産生態系を構成する生物・非生物資源の組成と時間的・空間的分布等の生態系の構造並びに生物種間の相互関係、生物種と非生物資源との相互関係及び物質の移動等の生態系の機能に関する知見の蓄積が不可欠であり、生物の生態的地位、種間関係の解明や生物多様性の客観的評価手法の確立が課題となっている。

イ  このため、群集レベルの生物間相互作用と生態系構造の解明及び農林水産生態系の空間構造とその機能の解明を推進する。

2)  農林水産生態系の変動メカニズムの解明

ア  生態系機能を活用した持続的な生産技術の確立及び温暖化等の地球規模の環境変動に対応した安定的な農林水産業の生産を図るためには、農林水産業活動と農林水産生態系との相互作用及び温暖化が生態系に及ぼす影響等に関する知見の蓄積が課題となっている。

イ  このため、気候変動等地球環境変動と農林水産生態系との間の相互作用の解明及び農林水産業の変化が地域生態系の変動に及ぼす影響の解明を推進する。

(3)生物機能・生態系機能の解明を支える基盤的研究

この研究領域においては、生物機能及び生態系機能の解明を加速するための長期モニタリングと遺伝資源・環境資源の整備・活用を推進する。

これらの基盤的研究により、生物機能及び生態系機能の解明・活用に関する研究を加速する。

なお、研究の推進に際しては、分析、情報等に係る多様な分野との連携及び研究基盤・情報基盤の有効活用に留意する必要がある。

1)  農林水産業に関わる環境の長期モニタリング

ア  地球温暖化や突発的な災害等による環境変化の影響を評価し、農林水産資源の適切な評価と管理を行うためには、代表的な地点における生態系の機能と構造に関する長期にわたる継続的なデータの収集と有用なデータベースの構築が課題となっている。

イ  このため、農業環境の簡易測定手法の開発と長期モニタリング、森林環境の長期モニタリング及び水域環境・生物の長期モニタリングを推進する。

2)  遺伝資源・環境資源の収集・保存・情報化と活用

ア  農林水産生物の分類や品種の開発、遺伝情報の解析、野外における環境資源の調査・分析及び各種モニタリング等の研究の進展に伴い、これらの研究から得られる種子・種苗、標本及び情報等の資産を効率的に活用して研究の加速化につなげ、国内外における研究のイニシアティブを確保することが課題となっている。

イ  このため、農林水産生物の遺伝資源の収集・保存・活用、ゲノムリソースの開発・整備と情報の統合的管理、環境資源の総合的なインベントリー(環境資源の試資料を体系的に保存・記録・情報化する仕組み)の構築と活用手法の開発及び家畜伝染病等の各種モニタリングデータの情報化と活用を推進する。

(4)食料・農林水産業・農山漁村の動向及び農林水産政策に関する研究

新たな農林水産政策の展開に当たっては、食料需給に関する動向予測及び農林水産業の生産構造に関する的確な現状分析と将来予測が不可欠である。また、新たな政策の導入を効果的に進めるためには、政策導入の影響を客観的に評価できる手法の開発及び国内外の政策動向の分析・予測・影響評価が必要である。

このため、この研究領域においては、食料・農林水産業・農山漁村の動向分析及び農林水産政策に関する研究を推進する。

これらの研究により、農林水産業の持続的な発展等に資する政策の的確な企画・立案を支援するとともに、研究開発を社会科学的視点から支援する。

なお、研究の推進に際しては、政策の企画立案に資するよう、行政部局との連携の強化及び多様な研究機関間の共同研究や人的交流に留意する必要がある。

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