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施設園芸の範疇は広く、露地のべたかけ栽培から、人工光による植物工場までが含まれます。施設栽培は、野菜、花き、果樹等の生産において、安定生産を支える重要な技術であり、高い収益性も得られることから、農業生産の発展に貢献してきました。我が国で施設園芸の言葉が使われ始めたのは、農業用ビニールが実用化された昭和30年代からといわれています。昭和40年代に入いると、施設の設置面積は急激に増加しましたが、近年は農業者の高齢化や輸入野菜の増加等の要因もあり、5万ha付近で微減傾向にあります(図1)。施設の種類では、塩化ビニルなどのハウスを中心に、ガラス温室や簡易な雨よけ施設も同様に増えてきました。ハウスの栽培では、野菜が圧倒的に多いのですが、ガラス室では花き、雨よけ栽培では果樹が多く栽培されています。花きでは施設栽培の占める割合が大きく、平成7年以降は露地よりも施設の比率が多くなっています。特に、鉢もの類は84%、花壇用苗もの類は76%と、そのほとんどが施設で生産されています。

近年では、施設園芸の経営規模が拡大する傾向が見られ、大型の栽培施設の導入事例が増加しています。個人経営では1棟の面積が0.2~0.3haのハウスの導入が増えています。さらに、大規模な法人経営では0.5~数haの規模の施設が新たに導入され、全国各地で稼働し始めています。それらの多くは、オランダで開発されたフェンロー型温室であり(写真1、2)、軒高が年々高くなる傾向にあります。現在、軒高の最も高いもので5.0mにもなっています。


施設園芸の経営規模が拡大化する一方で、1990年代からは、植物工場と呼ばれる施設の稼働も始まりました。植物工場とは、「環境制御や自動化などハイテクを利用した植物の周年生産システム」と定義されています。それは、施設内の温度、光、炭酸ガス、培養液等の環境条件を最適化させる自動制御装置と、播種、移植、収穫、出荷調整等の作業工程の自動化とを組み合わせ、植物を天候に左右されずに省力的かつ安定に生産するシステムであり、高度に機械化された施設です。最近の大規模温室もコンピューター制御による自動化が図られており、工場のような施設なのですが、太陽光のみを利用すること、温度の上昇抑制には窓を開けて換気するすること等の理由で、植物工場の範疇には含まれません。このように、施設栽培と植物工場との境界は曖昧で、植物工場も施設栽培のひとつの形といえます。
植物工場の起源は、1957年のデンマークのクリステンセン農場とされています。それは、光源に太陽光と人工光源を補光として併用する方法で、クレスの播種から収穫までの一貫自動生産を行った世界初の事例です。1970年代には、アメリカで人工光型の植物工場が開発されましたが、コストの高さが問題となり、ほとんどの開発が中止されました。現在、実用レベルでは、オランダで人工光を補光に利用した花き生産等が行われています。
日本では、全国で20カ所以上の植物工場が稼働しています(図2)。これらは、利用する光源の種類によって、太陽光を利用する太陽光利用型(補光併用型を含む)、人工光源のみの完全制御型に分けられます。特に完全制御型の中でも、施設内を遮光断熱壁で覆い、システム内外の空気、水、熱などの交換を著しく制限し、内部の環境を人為的に制御できる植物工場は、「閉鎖型植物生産施設」と定義されています。

太陽光と補光併用型の植物工場は、高度な環境制御システムや作業の自動化・省力化が進んだ園芸施設といえます。設置面積の平均は0.3haと従来の施設とほぼ同じ規模ですが、1ha近い規模の施設も作られています。補光の光源には高圧ナトリウムランプが使用されています。これに対して、完全制御型の植物工場の規模は平均0.07haと太陽光利用型と比べ小規模です。使用されている光源が高圧ナトリウムランプであることは太陽光利用型と同じですが、一部には蛍光灯を光源とする施設もあります。現在、植物工場はサラダナやレタスなどの葉菜類の栽培に多く利用され、北は北海道から南は九州まで幅広い地域に設置されています(表1)。なお、キノコ栽培の施設も、太陽光から遮断され、高度に温度・湿度等が制御されており、完全制御型の植物工場といえますが、本レポートからは割愛しました。最近では、青色LED(light emitting diode:発光ダイオード)などの最新技術の導入、苗の生産、都市内での農業生産、付加価値の高い植物の生産など、植物工場を含めた施設栽培の利用範囲は広がりつつあります。そのため、施設栽培の現状と今後の課題について紹介します。

施設先進国のオランダの施設園芸ガラス室の設置面積は1万haあり、野菜と花きが半分ずつの割合です。野菜では主としてトマト、キュウリ、パプリカが栽培されています。
先進のトマトの栽培では、
等の技術が導入されています。多収性品種の導入とも合わせて、平均収量は約50t /10aにもなります。これらの技術は、日本の大規模施設にも導入され始めています。
中国では、1980年代からの急激な経済発展に伴い、1980年には約7,000haであった施設面積が、2000年には160万haに増加しています。農村部にある1億5000万人もの労働力を施設生産に向ける考えもあり、中国農業における施設生産はますます重要性を増すと思われます。中国独特の施設として日光温室が挙げられます。その基本構造は下図のように、北壁および東西両妻面の壁は、土やコンクリートで作られています。特に北面の壁は南から差し込む日光からの熱を蓄積する効果があります。南側面と屋根面はプラスチックフィルムで被覆され、夜間は放熱を防ぐために、麦わらなどのコモで全面が覆われます。翌朝のコモの巻き上げも含め、作業は人力で行われています。日光温室の主な目的は寒さの回避で、中国大陸の厳しい寒気により、外気が0度に達する場合でも、晴天であれば施設内は25℃程度に保つことが可能です。

施設栽培にはいろいろな構造のハウスが開発され、使われています。
温度抑制や換気は作物の安定生産にとって重要であることから、様々な構造・方法が開発されています。フェンロータイプの施設等では、屋根の一部が開閉して換気する構造ですが、写真Aのように屋根の頂部全体が開くタイプ、または写真Bのように片側の軒部を支点にして丸屋根全体が大きく開くタイプ等も考案されています。遮光カーテンは高温対策技術の一つとして一般的ですが、今までは施設内の装備、または室外の屋根に沿った形での設置でした。写真Cは最近開発された外部に水平に展張する方式のハウスで、大型施設における高温対策技術の1つとして期待されています。
中山間地の傾斜地では、ハウスの設置や栽培が困難でしたが、最近、写真Dのような傾斜地に対応して設置可能な平張り傾斜ハウスが開発されています。
