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高軒高化と空間利用:最近の施設の軒高が年々高くなる傾向にあります。フェンロー型温室の軒高は、20年ほど前には2.5m程度でしたが、現在は4.5~5.0mになっています。
高軒高施設の利点には
大型施設での換気は、天窓からの換気の影響が大きいことから、高軒高施設と施設内気象との関係の研究が進められています。気象環境以外にも、施設構造の変化に伴い、作物の整枝方法、作業方法などについて、多面的に栽培技術を合理化していく必要があります。
被覆資材の耐久性:施設の被覆資材では、ガラス板が最も耐久性が高く、約30年使用することができます。近年ではプラスチックフィルムの耐久性が向上し、最近開発されたフッ素樹脂フィルム(厚さ0.1mm)では20年以上の長期展張が可能と、非常に優れた耐久性を持っています。硬質フィルムには、施設の構造部材が軽量ですむこと、台風や地震などの災害時の危険が少ないことなどの利点がありますので、従来のガラスに替わって、今後もさらに需要が伸びると見込まれています。
施設の低コスト化:大型施設導入は設置コスト単価の引き下げが期待できます。同一メーカーでの0.3ha規模の施設と2haの施設との設置コストの比較では、1m2当たり約20%のコスト削減効果があるとの試算があります。いずれにせよ、栽培施設の初期設置コストは経営的に大きな負担であることは変わりありません。そこで、耐候性があって周年栽培が可能なもので、かつ低コストとなるハウスを開発する動きが盛んです。部材や構造の規格化、標準化などによる施設建設の低コスト化に加えて、部材の製造から現場施工までの工程を抜本的に合理化する研究が開始されています。施設の初期設置コストの大幅な低減は、国際競争力のある生産体制を作るのに必須です。
温度制御:近年では施設栽培の収益性向上のため、作期拡大等による施設の周年栽培が図られつつあります。しかしながら、高温期の施設内温度は植物の生育適正温度を遙かに上回ることから、温度上昇を抑制する技術が必要になります。基本的な方法としては換気、遮光、冷房があります。空調機(エアコン)による冷房は膨大なエネルギーを必要とすることから、植物工場や一部の花き生産に使われているにすぎません。一方、水の蒸発による冷却メカニズムを利用した簡易冷房技術は、運転コストが安いことから、比較的導入が進んでいます。簡易冷房の代表的なものに、パッドアンドファン法と細霧冷房があります。
パッドアンドファン法は、ハウス片側壁面に、水で濡らした格子状のパネル(パッド)を設置して、逆側から換気扇(ファン)で吸引することにより、外気を取り入れる際に空気を加湿して、その気化熱がうばわれることにより冷却する方法です(図4)。この方法は、温度低下の効果がパッドの近くでは大きいのですが、パッドから離れると小さくなり、施設内の温度勾配ができてしまいます。そのため、パッドと換気扇との距離は40~50mが限界とされており、それ以上の大規模施設には使えません。この方法は育苗や花き鉢物栽培など集約的な周年生産栽培に適しています。

細霧冷房は、噴水ノズルをハウス内上部に多数配置し、水を細かい霧状に噴霧して空気を冷却する方法です。細霧噴霧により湿度が上昇することから、換気は欠かせません。また、噴霧時間が長ければ温度抑制効果も高いのですが、その分湿度もより高くなりますので、効果的な噴霧を行う条件の設定方法に技術開発の必要性があります。細霧用装置を冷房用だけではなく、薬剤散布などの用途にも利用できる、多目的利用細霧システムが多く導入されています。設備が有効に利用できることから、設置面積は1,000haを超えています。
完全閉鎖型植物工場では、人工光源からの発熱が大きく、暖房よりも冷房にエネルギーを費やしていました。LEDなど、発熱量の少ない光源が普及すれば冷房費用の削減が可能になります。植物工場の冷房には、一般に高価な冷凍機(ヒートポンプ)が使われてきましたが、現在は安価な家庭用エアコンが普及してきたため、苗生産については十分採算が取れるようになりました。太陽光併用型植物工場の壁面は透明なガラスやフィルムであり、断熱性は高くありません。そのため、冬季の暖房、夏季の高温抑制は完全閉鎖型植物工場より機能の高いものが必要となります。
湿度制御:空気中の湿度は、植物の生長だけでなく、病害の発生にも影響を与えます。例えば、病害には乾燥条件で発生しやすいウドンコ病や、逆に過湿状態で発生しやすい灰色カビ病などがあります。そのため、どちらかに偏り過ぎないような湿度の制御がもとめられ、一般に70~80%が好適な湿度とされています。
気流制御:施設内で植物を栽培するとき、換気等で施設内空気を動かさない限り、温度、湿度やCO2濃度にばらつきが生じます。例えば、葉面の近くではCO2濃度の低下した状態(葉面境界層)が生じ、光合成速度の低下につながります。葉面境界層を送風により破壊するだけで、光合成を一定の水準まで促進することが知られています(図5)。一方では過度の送風は植物のストレスや蒸散が促進されることによる、萎れの原因にもつながります。植物工場では、細やかな気流制御が可能であるため、植物の生産速度を最適化することが可能となります。

CO2ガス利用:植物の光合成速度は空気中のCO2濃度を高めることにより促進されます。しかし、一定以上の濃度になると効果が小さくなるため、実際は700~1,500ppmの範囲で制御されています。CO2はLPG(液化石油ガス) やプロパンガスを燃焼させて発生させる場合が多く、コストとの兼ね合いから主に大規模な施設で普及しています。また、ガス発電システムを利用したトリジェネレーションシステムは、発電機で発生する電力、熱、そしてCO2と、3つ(tri)の要素を有効利用するシステムであり、エネルギーを無駄なく使い、環境に優しい技術として注目されています。
病害虫管理技術:施設栽培では、生物学的に極めて単純化された生態系となり、アザミウマ、アブラムシ、コナジラミ、ダニ等の特定微小害虫の多発する傾向にあります。近年の環境負荷軽減を求める世論の高まりや、農薬の効かない病害虫の出現(薬剤抵抗性の発達)などにより、農薬に替わる新たな病害虫防除技術の開発が進められています。天敵昆虫等の生物機能を利用した病害虫防除法(生物的防除法)は、そのための重要な手段に位置づけられています。平成17年7月現在、昆虫・ダニ17種類、線虫2種類、微生物・ウイルス16種類が生物農薬として登録され、その約半数は施設栽培の野菜類用として登録されています。
施設園芸農業の盛んな高知県内のあるピーマン産地では、ほぼ全戸の農家で天敵昆虫が導入されています。農作業に従事する人たちにとって、空間的に閉ざされた施設内での農薬の散布作業は極めて過酷で不健康な作業でした。しかし、天敵昆虫は、自らが移動して害虫を探し出し補食しますので、農薬を散布する手間を省力化できます。防除作業の省力化は天敵を用いた病害虫防除の大きなメリットです。
生物的防除法だけですべての病害虫を防除することは現実的には不可能です。天敵とそれを補完する他の防除方法を上手く組み合わせて病害虫を効率的に制御する技術(IPM:総合的病害虫管理技術)が必要です。それには、天敵に悪影響のない選択的薬剤、施設内への害虫の侵入を防ぐ防虫網や紫外線除去フィルムの利用、熱水土壌消毒、病害抵抗性品種の導入などが挙げられます。
養液栽培:我が国の養液栽培は、第2次世界大戦後の1946年に清浄野菜の生産のために駐留米軍基地で始められたのが最初とされています。現在、養液栽培面積は1,000haを超え、施設生産面積5万haの2%を占めています。養液栽培を、固形培地の有無などで分類すると図6のようになります。水耕の中では湛液水耕が長年トップですが、近年、培養液を深さ5~10mmの浅い流れとして植物根に与えるNFT(Nutrient Film Technique)も比率が増加しています。一方、固形培地を用いる養液栽培は、礫耕に端を発しますが、現在ではロックウール耕が最も多くなっています。しかし、近年、ロックウールの使用後の処理問題から、処理が簡易で低コストである有機培地耕の導入も検討されています。有機培地耕では、連用により性質が変わるなど、耐久性に問題があり、工場的な生産に対応するためにはさらなる研究が必要とされています。植物工場による生産は、土などの固形培地を用いることはまれで、水耕と噴霧耕がそのほとんどを占めています。

施肥量管理:植物への養分の与え方では、従来の培養液の濃度を一定にする濃度管理法から、1日に植物体が必要とする量の肥料を施用する量的管理法への改良の取り組みがされています。この手法は、特に果菜類の栽培における過繁茂を抑制し、余剰の培養液を最小限に抑え、環境汚染を防ぐ狙いがあります。
培養液消毒:ロックウール等の固形培地を使用するとき、培養液の約20%は余剰廃液として排出されます。環境への負荷低減、培養液のコスト削減の意味から、余剰養液は循環再利用されるようになりました。しかしながら、培養液に病原菌などの有害微生物が混入すると急速に伝搬するため、培養液の微生物管理も重要な技術になります。微生物を通さない濾過膜の導入や培養液のUV殺菌技術、加熱殺菌技術などが実用化されています(写真6)。

施設栽培には、これまで述べてきた培地、温度、湿度それぞれを制御するとともに、それら全体を統合した栽培管理システムの構築が必要です。そのためには、エネルギー消費を最小限にする環境制御技術、システムの運用に必要な高い信頼度のデータ集積システム、トラブルに対して堅牢、かつ迅速に対応、復旧可能なシステムが必要です。
自律分散型制御:施設内の環境制御システムとして「自律分散型制御に基づく環境制御」があります。このシステムは、暖房機、天窓モーター、保温カーテンなど、施設で使用される各種制御機器にマイクロコンピュータチップを埋め込み、それらが独立して周辺の機器類の状況を判断して協調動作を行うシステムです。従来の施設では、集中管理により、施設内全体を均一になるよう管理していましたが、実際には多大なエネルギーを消費しても局所的な環境のばらつきは避けられませんでした。また、近年は同一施設内で複数の作物を栽培することも多く、集中管理型での環境制御では対応が困難です。自律分散型制御では、超小型低コストのコンピュータを装備した植物苗のセルトレイそれぞれを単位としたシステムが考えられています。このシステムでは、各セクションに装備されたコンピュータが各セルトレイの植物の状態や周辺環境を計測し、かつ生育目標や履歴を記憶します。そして、移動装置との通信により、そのセルトレイ個々の植物群に適した環境に「自発的」に移動させて常に植物の生育を最適化することが可能となります。この方法は、従来の集中管理型の環境制御方式と比較して、セルトレイ単位などのきめ細かな栽培管理を可能にする点で独創的であり、今後の進展が注目されています。
遠隔管理:施設環境の遠隔制御は、設置費用等、高コストの技術でしたが、近年のIT技術の普及によってコスト削減が可能となり、普及も進んでいます。施設内のセンサーなどを携帯電話のデータ通信網に接続し、インターネット経由で情報の取得が可能なシステムが開発されています(写真7)。S社ではIP網に接続するOpenPLANETという独自技術が開発されています。これは家庭や工場などあらゆる電気機器をインターネットで遠隔監視、制御できるシステムですが、温室内のセンサーや機器にも応用され、温度や湿度などのデータの監視、暖房の運転、窓の開閉など、様々な機器の運転状況の通知や設定の改変などが遠隔地からでも可能となっています。

空間制御:苗を定植したときの狭い間隔のままで植物を育てると、生育に従い、葉同士が重なり合って光合成速度が低下し、生育が悪くなります。ガターと呼ばれる長い桶を栽培容器として使用して葉菜類を栽培する方法では、植物間の自動スペーシング装置により、生育ステージに応じて自動的に株間を広げていくので、通常の栽培に比べ1.5~2倍近い生産性の向上が見込めます。
その他、自動で、収穫、搬送、さらには選果まで行う省力化栽培システムの構築に向けた研究が行われています。(コラム6)
イチゴ、ナスなどの果菜類のロボット収穫技術の開発が進められています。収穫適期の果実のみを選択収穫するには、果実ごとの収穫適期の判断や果実位置の検出、果実を傷つけずに採果する技術など人間のような高度な機能が要求されます。
イチゴでは、近年増加している高設栽培を対象とした収穫ロボットの開発が行われています(写真左)。果実に接近し果実の大きさや収穫適期を判別し、果柄をハサミで切断してコンテナに収容するまでの操作を自動で行います。イチゴの収穫適期は短く、収穫最盛期の生産者の収穫作業は過酷ですが、夜間にロボットが収穫するようになれば、流通面、労働面でも大きな改善が期待できます。また、イチゴは傷みやすいため、収穫・調整時の取り扱いに注意を要します。選果機においても果実に触れずに果実の柄の部分を挟む方式がとられています(写真右)。精度向上や低コスト化等、収穫・選果ロボットを実用化するために解決すべき課題は多いですが、将来有望な技術です。ナスにおいても、施設内を移動しながら収穫を行える収穫ロボットのプロトタイプが完成しています。

人工光による植物栽培は、季節、天候等に左右されず、常に一定の光条件が再現できる利点があります。このため、多くの人工光源に関する研究や人工気象室における植物生理に関する研究が行われてきました。しかし、一般に、人工光の光量は太陽光に比べて少ないため、植物が徒長する等の問題があります。太陽光と同等の光量を人工光で得るためには、植物体を至近距離まで光源に近づけなければなりませんが、ランプからの熱線の発生が大きいため、葉焼けなどの障害を引き起こすおそれがあります。また、ランプの光量を強くした場合、熱の発生が大きくなることから、温度上昇を抑えるための空調コストが高くなる問題も生じます。このため、近年はLEDやライトパイプなど、新しい光源に対する技術開発が活発に行われています。現在、施設栽培に利用されている光源の効率比較を表4にまとめました。このうち、植物工場に最も多く使われているのは高圧ナトリウムランプです。価格は高いのですが、ランプの効率、光合成の効率が高く、寿命が長いこと等、補光光源に適した特徴を持っています。

LED光源の特性:自然光の波長は300~3,000nmの範囲に分布し、そのうち、光合成に必要な波長は約400~700nmの範囲です。特に、植物の持つ葉緑体の吸収スペクトルは青色(450nm付近)と赤色(660nm付近)にピークがあるので、その波長の光を効率的に供給できる光源が望まれます(図7)。可視発光ダイオードは、蛍光灯などに比べて狭い領域の特定波長のピークを持っています。青色LEDや赤色LEDの波長は、葉緑体の吸収波長とほぼ一致しているので、植物による光の吸収効率(全光量に対して植物が吸収する光量の割合)が高まり、比較的弱い光でも健全に生育させることができます(図8)。


また、LEDは、比較的小型で低電圧による発光が可能であり、電気エネルギーが光に変換される発光効率は、蛍光灯の20~24%に比べてLEDは80~95%と高く、さらに、パルス(間欠)照射が可能となり、消費電力の節約が可能となるなどの利点もあります。実際に、赤色LEDのみを光源にして、リーフレタスの生育が可能です。ただし、赤色光のみで栽培した場合、植物の種類によっては健全な形態形成ができないため、栽培可能な作物が、サニーレタス、コマツナ、ルッコラ等、一部の葉菜類に限定されます。このため、他の作物を栽培するには、植物の正常な形態形成や光合成促進を可能にする青色LEDの併用が必要になります。青色LEDは赤色LEDに比べて価格が高いため、導入が遅れていましたが、最近、酸化亜鉛を利用した青色LEDの開発が成功したことにより、価格が低下してきており、植物工場への利用が進むと思われます。
新たな照射技術:太陽光利用を含め、人工光の植物工場でも、光は連続して植物体に照射されています。植物の生育にとって、連続した光照射が最も効率的であるかは、これまで明らかにされていませんでした。そこで、高辻らは、連続光照射と間欠照射を比較し、LD(Laser diode:半導体レーザーダイオード)の照射光パルス周期を400μs(0.0004秒)にすることにより、単位光量当たりの光合成及び成長の速度が連続光に比べて20~25%増大することを明らかにしました(図9)。リ-フレタスやサラダナの成長は、蛍光灯の2倍程度になったという事例もあります。このことは同じ光エネルギーであっても生産効率を高めることが可能であることを意味し、植物工場のように電力コストが問題となるシステムでの応用が期待される結果で、未来の植物工場にとって重要な技術になると考えられています。また、光の照射周期を最適化する技術はLEDにおいても応用可能な技術です。

プリズムライトガイド:照明分野における新しい技術のひとつに、プリズムライトガイドがあります(図10)。これはプリズムによる光の反射の原理を応用したもので、パイプが光ることから、ライトパイプと呼ばれます。光源からの光はプリズムライトガイドを通って植物体に届きます。そのため、光源と発光する部分を分離できる、光源から離れた場所への照明や照射方向の変更が可能、一つの光源で広範囲の照明が可能、等の利点があります。また、ライトパイプの光源はマイクロ波により発光する新しいタイプの無電極放電ランプです。このランプは、フィラメントや電極を持たないため、従来の光源に比べて極めて長い寿命を持っています。近年、ライトパイプを利用した植物育成用のグロースチャンバが開発されました。光源は装置の外に設置してあり、光源からの発熱を考慮して装置内の温度調節をする必要がないことから、冷却コスト削減による省エネルギー化が期待されています。
