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人材育成プログラム

要 旨

「農林水産研究における人材育成プログラム」

平成18年3月28日
改正平成23年4月19日
農林水産技術会議

1 農林水産研究における人材育成について 

(1)人材育成プログラム策定の意義

農山漁村の6次産業化や食の安全など農林水産政策の課題解決に必要な研究開発を推進し、その成果の普及と実用化を図っていくためには、優れた人材の育成が不可欠である。農林水産技術会議は、平成18年3月、農林水産試験研究独立行政法人(以下「研究独法」という。)を主な対象とする「農林水産研究における人材育成プログラム」を策定した。このプログラムは、研究者のライフステージに沿った人材育成の仕組みの検討、研究独法のミッションに適合した人材像の提示、多様なニーズ、シーズへの対応、キャリアパスの現状把握と検証、双方向コミュニケーションを担うコミュニケータの育成・活用等を内容とし、研究独法に対して、それぞれのミッションに適合した人材育成プログラムを策定するよう求めた。研究独法においては、これを受けて人材育成プログラムを策定し、人材育成に係る取組がなされてきたところである。

人材育成プログラムの策定から5年が経過し、農林水産研究にふさわしい人材を育成していくためには、この間の情勢変化を的確に反映させて、プログラムを見直すことが必要となっている。

 

(2)人材育成プログラム改正の趣旨

農林水産省としては、「食料・農業・農村基本計画」(平成22年3月30日閣議決定)、「森林・林業基本計画」(平成18年9月8日閣議決定)及び「水産基本計画」(平成19年3月20日閣議決定)の実現を図るため、行政ニーズを的確に踏まえた研究開発の着実な推進や、レギュラトリーサイエンス(科学的知見と規制や行政措置の橋渡しとなる科学や研究)の実施、農山漁村の6次産業化の戦略的な推進等が極めて重要な課題となっており、これらの課題に研究独法など研究の勢力を結集して取り組むことが必要となっている。

また、国際的な競争条件の変化、急速な少子高齢化の進展等の経済社会情勢の変化に対応して、研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進を図るため、「研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律」(平成20年法律第63号) が制定され、同法第24条第1項により、研究独法に対して「人材活用等に関する方針」の作成が義務づけられた。

これらを受けて、農林水産技術会議は、「農林水産研究基本計画」(平成22年3月30日決定)において、人材育成の強化の方針を盛り込んだ。具体的には、研究を行う 人材については、「若手・女性研究者等の一層の能力活用」、「国際的なリーダーシップが発揮できるような人材の育成」、「卓越した研究者の確保」、「研究独法と大学の連携」等を推進するとともに、研究管理部門・研究支援部門等の人材については、「研究マネジメントに優れた研究管理者の計画的な育成」、「知的財産、研究開発計画、広報、情報、地域における産学官連携のコーディネート等に係る部門の人材の育成」、「高度な専門技術を有する人材の育成」等を推進することとした。

今般の改正は、以上のような情勢の変化に対応し、 新たな人材育成の方針を示すものである。

 

2 人材育成の強化のために必要な事項

人材育成においては、将来にわたる研究の担い手としての優れた人材を育成するとともに、このような人材が能力を十全に発揮できるよう研究活動を支える研究支援部門の充実、研究者間や組織間のネットワークの形成等を強化することが不可欠である。農林水産研究における人材育成については、これまでもそれぞれの研究機関において、その特性に応じて進められてきたところであるが、引き続き、次のような事項に重点を置いて取り組むこと が重要である。

(1)意欲ある研究者の育成・確保

研究者に対する競争的環境の整備、研究資金や研究環境の効果的な付与方法の検討及び公正で透明性の高い評価制度の構築を行う。また、研究者が研究に集中できるようにするための研究支援体制を一層充実する。  

(2)若手研究者の能力活用のための支援

若手研究者が高い目標にチャレンジしつつ、競争的条件下で計画的に研究に取り組むことのできる環境を醸成することが必要である。

このため、国内研究交流、共同研究、各種研修等に積極的に参加することができる環境、国際会議での講演、在外研究等を通じて、研究者間や組織間のネットワークの活用や国際的な感覚を身につけることのできる環境を、それぞれ構築する。

このほか、長期間の指導・育成を要する研究分野など各研究分野の特性を十分勘案し、その特性に対応した若手研究者の指導・育成システムを明確化する。  

(3)女性研究者、外国人研究者などが活躍できる環境の確保

女性、外国人などの多様な研究者がそれぞれの能力を一層発揮できる環境を整備することが重要である。

このため、研究者の性別に関わらず、育児、介護、国内留学、在外研究などライフステージの変化に伴う過渡的状態に対応できるシステムを整備する。また、外国人研究者について、日本語問題(長期滞在の場合)、生活、年金問題(短期滞在の場合)等への適切な対応を行う。さらに、各種招へい制度等を活用し、外部の卓越した研究者の起用・活用を図る。  

(4)教育、研修等の充実

国内留学等を通じた新たな研究手法の取得や成果の普及を視野に入れた研究成果発信手法の取得を促進する。また、外部研修への参加や自己研鑽を通じた研究マネジメント手法の取得を促進する。 

(5)コミュニケータの育成

新たに開発された科学技術を国民が正しく理解することができるよう、国民と専門家を橋渡しする科学技術のコミュニケーションの担い手の育成・確保が極めて重要である。特に、農林水産分野は、地球規模の環境問題や食料問題、食の安全など科学を基盤として取り組む必要がある分野であり、これらに係る農林水産技術コミュニケータの育成・確保を図る必要がある。

このため、研究実務を経験した者の中から適任者を確保し、OJT(仕事を通じて必要な技術、能力、知識、あるいは態度や価値観などを身に付けさせる教育訓練)を中心にコミュニケータの育成を進める。

 

3 研究独法における人材育成方策

研究独法においては、2で掲げた取組を実施するため、法人の特性に応じ、次のように取り組むことが重要である。  

(1)研究部門における人材育成

多様な研究者を育成・確保していくためには、研究者がキャリアパスを見通した上で、それぞれのライフステージ及び専門性に応じた取組を行うことを支援することが重要であり、各ステージにおいて、次のような取組を実施、強化する。

[1]若手研究者の育成・確保

独創的で優秀な研究者を養成するため、研究者の採用等について、研究者の総数に占める若手研究者の割合の向上などの数値目標等を設定する。また、テニュア・トラック制(若手研究者が、審査を経てより安定的な職を得る前に任期付きの雇用形態で自立した研究者として経験を積む仕組み)を導入するなど、任期付きで採用された若手研究者を活用する仕組みを構築する。さらに、競争的研究資金への応募の奨励、国内外での研究や研究集会への参加の機会の拡大、海外派遣や留学促進のための支援、アウトリーチ活動の促進など、若手研究者に自立と活躍の機会を付与する。 

[2]ポストドクター等のキャリア開発

博士課程修了者及びポストドクターが、その適性や希望、専門分野に応じて、将来に向けたキャリア開発に取り組むことを支援する。 

[3]女性研究者の育成

優れた女性研究者の能力を活用するため、研究者の採用等について、研究者の総数に占める女性研究者の割合の向上などの数値目標 を設定するなどにより、女性研究者の育成・確保を目指す。また、出産、育児等を考慮した業績評価の実施及びライフステージごとの研究環境の整備を促進する。  

[4]外国人研究者の活用

優れた外国人研究者の能力を活用するため、外国人研究者の採用に際しては、英語での応募も可能とするなど、研究独法の特性に応じて、採用の拡大・登用に向けた条件整備に努める。 

[5]卓越した研究者の活用

国内外の卓越した研究者を職員として処遇するための研究環境を整備するなどの条件整備に努める。 

[6]国際的リーダーシップを発揮できる研究者の育成

国際共同研究への参画、国際機関への派遣、外国人研究者の受入れ等を通して、国際感覚に優れた研究者を育成する。 

[7]在外研究の促進

外部機関が実施する多様な留学制度(OECDへの派遣制度など)の活用など、在外研究の促進を図る。 

[8]行政、公設試、大学及び民間との人材交流等の強化

ア 行政との人材交流等

研究者の行政経験に対して適切なインセンティブを付与するよう努める。

イ 公設試との人材交流等

公設試との人材交流を促進するため、多様な交流の機会(人事交流、出張等)の充実を図る。

ウ 大学、民間との人材交流等

連携大学院の活用、共同研究の促進などにより、大学との間で多様な交流の機会を設ける。民間との交流については、農林水産・食品以外の分野を含めた幅広い人材の受入れ(共同研究における駐在等)を促進する。

 

(2)研究管理・研究支援部門における人材育成

研究独法において研究活動を効果的、効率的に推進していくためには、研究者に加えて、研究活動全体のマネジメントや、知的財産の管理・運用、広報、情報管理等を専門とする多様な人材の育成・確保が不可欠であることから、次のような取組を実施、強化する。

[1]研究管理部門における人材育成

研究管理者については、研究独法の所掌する研究分野全体について、研究の企画立案・管理に関する経験を段階的に積むことを促進する。具体的には、海外を含む複数の研究機関や複数の研究領域での業務経験、行政部局での業務経験のほか、 学位の取得、プロジェクトの企画立案・管理、競争的資金の獲得など、多様な業務を行う機会を設ける。

また、それぞれの研究独法のミッションを踏まえつつ、多様な人事パターンのそれぞれにおいて優れたマネジメント能力が身につけられるようにするとともに、公募制度等も導入し、優れた研究管理者の採用に努める。

さらに、新たに開発された技術に対する国民一般の理解を醸成するための情報収集・分析・説明能力、国民一般の疑問点等を研究者に対して適切に伝える能力の向上を図る。
あわせて、研究の進捗管理が適切に行われるよう、研究管理者が担当した研究が普及・実用化したか否か、その実績を適切に評価するよう努める。

[2]研究支援部門における人材育成

ア 企画支援部門

企画支援部門を担う人材については、農林水産省との人事交流なども活用しつつ、研究者以外の人材の積極的な登用を推進する等により、研究の企画立案能力の向上を図る。

また、行政部局や都道府県との連絡調整に加え、異分野を含めた民間や大学との連携が重要であることから、地域における産学官の円滑な連携をコーディネートできる人材の育成に努める。

イ 広報部門

広報部門を担う人材については、その専門性を踏まえ、研修等を活用し、長期的視点から人材の育成・確保を図る。

また、研究成果を広く社会に普及し、その実用化を図っていくためには、インターネットなどの幅広い手段による情報発信を行い、双方向コミュニケーションを支援することが重要であることから、最新の情報伝達手段を適切に活用できる人材の育成・確保に努める。

ウ 情報管理部門

情報管理部門(LANシステムの管理・運営、研究情報の収集・提供、データベースの構築・管理など高度の専門的知識を要する業務)を担う人材については、職務内容の高度化に対応できる人材を確保し、研修などを活用しながら最新の専門的知識の向上に努める。

エ 知的財産管理部門

知的財産を担う人材については、特許等の取得の意志決定支援、弁理士事務所や民間企業等との折衝、民間企業等のニーズを踏まえた特許や品種登録等の知的財産権の許諾・管理、海外への出願や許諾に関する業務など、知的財産に係る総合的なマネジメントを研究開発の企画段階から一体的に行うとともに、特許出願の基礎知識などについて研究者等への啓発活動を行うことが重要であるため、各種研修等を活用し、専門的人材の育成を図る。

オ 技術支援部門

技術支援部門(ほ場設計、遺伝資源の特性調査、交配・繁殖、実験模型作成、化学分析、調査船の運航、調査機器整備、調査手法開発など高度な専門技術・知識又は資格を要する業務)を担う人材については、業務の高度化に対応した育成プログラムを構築し、外部研修等を活用した人材育成を図る。

[3]農林水産技術コミュニケータの育成・確保

農林水産技術コミュニケータについては、高齢研究者や再雇用者を含め、研究実務を経験した者の中から適任者を確保する。当該者については、科学技術に関する高度な知識を背景に、国民の視点に立って研究情報を取捨選択し、分かりやすく解説する業務、遺伝子組換え技術など先端技術に関して技術の受け手である国民に正確な情報をわかりやすく継続的に提供する業務を担える能力の育成を図る。あわせて、コミュニケータの育成のため、大学や民間企業で行われている養成講座等の外部研修の積極的な活用を促す。

 

4 農林水産技術会議事務局が行う人材育成方策

行政組織と研究開発組織の橋渡しを行う立場から、農林水産技術会議事務局においては、次の取組を行うことが重要である。

(1)研究独法との交流

研究独法における研究が行政ニーズを踏まえて効率的、効果的に実施されるためには、研究独法の研究者及び農林水産省の行政部局の職員が互いの業務内容や方向性についての理解を深めることが必要である。

このため、農林水産技術会議事務局は、研究独法から人事交流により採用した研究者について、行政感覚を醸成するための研修を実施するとともに、行政部局への配置等を検討する。また、研究独法の新規採用者(任期付き採用を除く。)を対象とした行政研修を実施する。

 

(2)研究者の研修及び表彰

農林水産技術会議事務局は、研究者の幅広い知見の取得や能力の向上に資するよう、ポストに応じた研修の受講を促進する。また、公設試等の研究者が受講しやすいよう、若手研究者を対象とした研修を各地域で開催する。さらに、レギュラトリーサイエンス等、行政部局と連携した研究を実施する研究者のインセンティブを高めるため、行政施策の推進に貢献する優れた研究成果を上げた者への表彰を行う。

 

5 人材育成プログラムの実現のために

「農林水産研究基本計画」等に定められた研究開発の重点目標を達成するため、本プログラムに基づき、研究者等の人材の育成・活用に関する必要な施策を着実に実施していくことが必要である。農林水産技術会議においては、本プログラムに定められた人材の育成のための施策を着実に実施するとともに、研究独法や関係機関に対して働きかけを行い、その計画的な実施に努めることが必要である。

研究独法においては、本プログラムを踏まえ、それぞれのミッションに適するよう人材育成プログラムを改正するとともに、これを採用方針や研修計画に反映させることが必要である。あわせて、改正したプログラムの進捗状況や有効性を把握し、行政ニーズや社会的ニーズの変化を反映して適宜見直しを行うなど、フォローアップを着実に実施しながら取り組むことが必要である。

また、民間企業、大学、都道府県等の研究機関においても、本プログラムを参考に、それぞれに適した人材育成の取組が進められることを期待する。

 

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